[表] |
消印27日午前10時-11時 |
青山南町六ノ一〇八 小宮豊隆様 本郷曙町 十三 寺田寅彦 |
[裏] |
拝復小弟の第五にはいつたのは廿九年で卅年の六月頃始めて先生の御宅を尋ねそれから俳句をやり出しました、卒業したのが卅二年の七月です、考へて見ると卅年の秋にはまだ運坐はなかつたような気がする、自分の始めて出た運坐が秋であつたがそれがどうも卅一年ではなかつたかといふ気がします、固より至極ぼんやりで覚束ないがそんな気がします。兎に角卅二年になつてから運坐が始まつたのではないと思ひます、不幸にしてその頃の記録がないので残念でたまりません、なほよく考へて見て手掛りがあつたら御知らせしましよう、決闘の句は覚へがありません、」 六月廿六日 |