・「漢籍、附国字解」の部には、中国で刊行された漢籍のほか、日本(江戸期~明治期)において出版されたもの、日本人によって注釈が施されたものを含む。また附録として、日本人の手になる漢籍国字解を収める。
・「育徳館」の蔵書印が押されたものが圧倒的に多いが、「思永館」の蔵書印のあるものも30点ほど見られ、そのうち多くは「育徳館」の印もあることから、小倉藩校時代の蔵書が引き継がれて収蔵されていることが分かる。
・「豊津文庫」の蔵書印があるものの中には、明治前期に出版されたものが多く見られるが、全体としては江戸期の刊本が多い。刊年が分かるものでは、約半数が江戸後期のものだが、前期・中期のものと見られる書籍も含まれる。
・漢籍は、経・史・子・集の四部の全般にわたり一通りの書物が収蔵されているが、特に『二十一史』、『資治通鑑』、『十八史略』など史部の収蔵が多い。その他、経部の『五経』や『四書』、子部の『大学衍義』、集部の『文章軌範』、『唐宋八家文』などが複数所蔵されている。
・中国刊本もそれなりに見られ、主なものとしては以下のようなものがあげられる。
①『大学衍義補』160巻24冊(資料番号1077)は、明・万暦33年(1605)序刊の美本。
②『古今合壁事類備要』前・後・続・別・外集364巻97冊(資料番号1092)は、明・嘉 靖35年(1556)刊本と見られる。
③『佩文韻府』106巻200冊(資料番号1095)は、清・康煕50年(1711)刊本。
④『二十一史』(資料番号990~1008)は、『十七史』に『弘簡録』、『続弘簡録』を合して出版された清刊本で、若干欠本も見られるが、37帙に収められている。
⑤『十三経註疏』(資料番号957~968)は、清・嘉慶20年(1815)刊本で、『周易』(全)と『尚書』、『毛詩』、『春秋公羊伝』の一部を欠くが、155冊が収蔵されている。
⑥『四書典林』30巻首1巻16冊(資料番号981)は、清・乾隆元年(1736)序刊本で、2帙に収められている。
・収蔵する漢籍はほとんどが刊本であるが、1部のみ国字解の写本を有する。『易経小解』(熊沢蕃山撰)7巻卦原1巻5冊(資料番号1132)は、江戸期の整った写本である。
以上のことから、現存の漢籍は藩校時代の蔵書の全容を止めているとは言い難いが、江戸期の藩校における必須の書物を窺い知ることのできる蔵書ということができる。
(柴田篤)