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[刊行のことば]

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 かつて「豊前国」の中心として栄えた豊津の歴史を、その流れに従って明らかにしておこうということから町史編纂事業を始めて今日まで十二年を経過いたしましたが、いまここに『豊津町史』が完成し刊行できましたことを心から喜びとするものであります。
 自然環境に恵まれました本町域には一万数千年前より私たちの先祖が住み始め、そのあと八景山古墳群に見るように古墳時代の終わりには旧仲津郡域の中心的な豪族の発生をみています。また上坂廃寺にみるように白鳳時代には早くも仏教文化が花開き、その後奈良・平安時代にかけては豊前国を統括する国の役所(国府)がおかれ、国立寺院の国分寺も建立されて文字どおり豊前国の政治・経済・文化の中心としての位置を長く占めていました。さらに下って明治初期には小笠原氏の錦原への移転によって「豊津藩」が誕生し、錦原台地が開発されて賑わいを見せ、藩校「有徳館」では他地域にさきがけて洋学が教授されました。
 豊津のこのような栄光と先進性に富んだ歴史は私たちの先祖がつねにたゆまない努力を積み重ねてきた賜であり、誇りであります。「温故知新」という言葉がありますが、過去の歴史を学ぶ中から私たちの住む現在を考え、さらに未来の豊津を展望していくことは大切なことと思いますし、郷土をより深く理解することからさらなる郷土愛がはぐくまれていくことと信じます。
 豊津町では町内の貴重な歴史遺産を大切に保存するとともに、点在する史跡を線として結んで活用するために「歴史回廊の里づくり」を推進してまいりました。その一環として平成七年には「豊津歴史民俗資料館」も完成し、豊津の歴史を学ぶ町内外からのさかんな活用をいただいておりますが、今後も町政の中でこの輝かしい歴史と風土を大切にしていきたいと考えます。
 このたび刊行しました『豊津町史』が、さらなる郷土の理解のために家庭や学校などで広く活用して頂ければ幸いと存じます。終わりになりましたが、当初より町史編纂にかかわって頂きました編纂委員会の皆様や執筆委員の諸先生をはじめ、校閲・校正などで貴重な助言・指導を頂きました先生方、資料の提供を頂きました方々に心より感謝とお礼を申し上げて刊行の挨拶といたします。
 
  平成九年三月三十一日
 
豊津町史編纂委員長
町長 日野宏