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一 行橋平野の概観

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 行橋平野はその三方を山地に囲まれた臨海平野である。北には貫山(七一一・六メートル)、水晶山(五三一・三メートル)、高城山(四〇五・九メートル)などの山峰からなる中起状山地が、西方には平尾台カルスト台地と障子ケ岳(四二七・三メートル)、飯岳山(五七三・〇メートル)の中起状山地が、南方には英彦山、犬ケ岳などの大起状山地が、それぞれ分布する。このうち、北・西方の山地は古生界や中生界からなるが、南方の山地は主として第四系からなる。この山地の山麓部には緩斜面の発達がよい。平野の内部には残丘が点在し、観音山、幸ノ山、二先山、蓑島山、沓尾山などがある。また飯岳山から東北東方向へ御所ケ岳、馬ケ岳、八景山、覗山へと連続する飯岳地塊列(東木、一九二八)がある。この地塊列は地形構造上、行橋平野を二分する山地列で、北部の行橋平野主部(行橋盆地)は田川変成岩類や花崗岩類などの古期岩類の分布地域にあたり、浸食盆地的な性格を持つ。南部は古期岩類とその上に不整合でのる第四紀火山岩類からなり、犀川盆地のように浸食盆地もみられるが、山麓緩斜面や扇状地が広く分布する(第3図)。
 

第3図 行橋平野の接峰面図

 行橋平野の水系は北から長峡川、今川、祓川、城井川があり、城井川が椎田で周防灘に注ぐほかはすべて蓑島付近で周防灘に注ぐ。各河川の水源地帯の地質をみると長峡川は古期岩類分布地域を水源とするが、その他の河川は第四紀火山岩類からなる英彦山・犬ケ岳山塊を水源とする。このうち今川は流域の大部分が古期岩類地域にあり、また中流部の赤村油須原で遠賀川水系・御祓(みそぎ)川の上流を争奪し(波多江、一九七七)、また犀川の盆地を持つことから、むしろ古期岩類地域の水系とみなせる。これは平野部に入ってからの河川勾配(長峡川〇・一四度、今川〇・一八度、祓川〇・四二度、城井川〇・四九度)にも現れている。すなわち長峡川・今川両水系は緩やかな勾配を持ち、また今川は中流部に盆地を持つため、より下流への粗粒物質の運搬が少なく、逆に祓川・城井川は英彦山・犬ケ岳山塊から途中に著しい盆地部を持たないまま急勾配で流下するため、粗粒物質を直接周防灘まで運搬していると思われる。