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(1) 沖積層

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 沖積層の基盤をなすのは大部分が花崗岩類や変成岩類などの古期岩類であるが、金屋では花崗岩類を切る谷を埋めた二六メートルを超える厚さの堆積物がみられ、その上面高度は今井で海面下三メートル、長峡川の下流で海面下九メートルであり、およそ〇・一三度で南から北へ傾き下がっている。この地層は層相、N値、分布、勾配などから祓川の形成した扇状地であるL面の先端部が埋没したものと考えられる。
 行橋平野の沖積層は下位から下部砂礫層、下部砂層、中部泥層、上部砂層、上部泥層に区分される。
 
 i 下部砂礫層
 沖積層の最下部を占め、小波瀬川沿いでは四・八メートル以上の厚さを持ち、直径〇・五~四センチメートルの円礫を主とする砂礫層からなる。本砂礫層基底の深度は最も深い部分で海面下一三・五メートルより大である。この砂礫層は長峡川、小波瀬川沿いにほぼ二~三メートルの厚さで連続するが、祓川沿いではほとんど地表部まで分布し、厚さも最大で七・五メートルになる。本砂礫層の堆積時期などは不明であるが、一部はL面と同じ時期である。
 
 ii 下部砂層
 下部砂層は最大で六・二メートルの厚さを持ち、シルト質砂の部分もあるが大部分は細砂~粗砂からなる。また腐植物や貝殻あるいは礫を含むこともあり、上流側へしだいに礫の割合が多くなる。小波瀬川沿いの汐入橋における本層下部の腐植物を含むシルト質砂の放射性炭素(14C)年代は七七一〇±二一〇年BPである。
 
 iii 中部泥層
 中部泥層は貝殻を含むシルトあるいは砂質シルトからなるが、河口部の蓑島では砂が卓越する。貝殻はシルト部ではハイガイが含まれている。本層の厚さは最大でおよそ一二メートルであるが、内陸方へ薄くなる。また今川や祓川の方向へ薄くなり、金屋ではシルトまじり砂になり、今井で消滅する。中部泥層の堆積の中心は長峡川・小波瀬川沿いの地域で、ここに典型的に泥層が発達している。中部泥層の上面の高度は最も高い一ツ橋で海抜一・八メートルである。汐入橋での本層上部(海面下一・二メートル)の腐植物の14C年代は四八六〇±二六〇年BPである。また延永小学校では本層下部に三〇センチメートルの厚さで灰白色火山灰層がみられる。これは中部泥層上部の年代とも考え合わせると、薩南諸島の鬼界カルデラからおよそ六三〇〇年前に噴出したアカホヤ火山灰(町田・新井、一九七八)に相当するようである。
 
 iv 上部砂層
 厚さ最大で三メートルの上部砂層は貝殻を含むシルトまじり砂あるいは中砂~粗砂からなる。本砂層はほぼ現地表面まで分布し、小波瀬川・長峡川の下流側では貝殻を含むが、上流側では礫を含む。本層は三角州前置層で、中部泥層堆積後の河川による埋め立てが現在まで続いていることを示すと思われる。祓川下流部では本層は浜堤堆積物に連続し、高度も海抜四メートルを超える。
 
 v 上部泥層
 後背湿地や潟湖的な環境下では上部砂層上に有機質シルトが一メートル以下の厚さでみられ、また水田耕土となっている有機質のシルト~砂層が全体にみられる。