梅雨季の天気図の特徴は、北のオホーツク海高気圧から吹き出す冷たい気流と、南の太平洋高気圧から送り込まれる暖かく湿った気流との間に、東西に長く延びた梅雨前線ができることである。この前線に沿う雲の帯は、ベンガル湾から中国、日本を通り、千島列島まで延びている。中国ではこれをマイユと呼んでいる。
梅雨末期に、梅雨前線に向かって南の海上から高温多湿の気流(湿舌)が流れ込み、集中豪雨や大雨を降らせ、大きな災害を引き起こす。
日本各地の梅雨入り、梅雨明けの平年値(第1表)をみると、五月中旬に沖縄や奄美諸島をスタートした梅雨前線は、二〇日ほどかけて北上し、六月一日ごろ九州南部、六月六日ごろ九州北部に達する。梅雨明けは沖縄で六月二十二日ごろ、奄美で六月二十七日ごろである。太平洋高気圧の勢力が大きくなるにつれ、次々に梅雨明けするが、九州北部では七月十八日ごろで、それまでのおよそ四〇日間が雨季としての梅雨季である。
第1表 各地の梅雨入り・明けと梅雨期間総降水量の平年値(昭和21~昭和55年)(福岡管区気象台 1990)
地方 | 予報中枢 | 梅雨入り | 梅雨明け | 梅雨期間 | 梅雨期間降水量(ミリメートル) | |
沖縄 | 沖縄 | 5月11日 | 6月22日 | 42日 | 那覇 | 525.6 |
奄美 | 鹿児島 | 5月11日 | 6月27日 | 47 | 名瀬 | 719.7 |
九州南部 | 鹿児島 | 6月1日 | 7月15日 | 44 | 鹿児島 | 755.0 |
宮崎 | 668.6 | |||||
九州北部 | 福岡 | 6月6日 | 7月18日 | 42 | 福岡 | 506.8 |
下関 | 546.3 | |||||
佐賀 | 619.9 | |||||
長崎 | 611.2 | |||||
熊本 | 745.3 | |||||
大分 | 472.4 | |||||
四国 | 高松 | 6月5日 | 7月16日 | 41 | 高松 | 294.0 |
近畿 | 大阪 | 6月8日 | 7月17日 | 39 | 大阪 | 377.1 |
中国 | 広島 | 6月7日 | 7月18日 | 41 | 広島 | 492.7 |
東海 | 名古屋 | 6月9日 | 7月17日 | 38 | 名古屋 | 354.8 |
関東甲信 | 東京 | 6月9日 | 7月18日 | 39 | 東京 | 255.4 |
北陸 | 新潟 | 6月9日 | 7月20日 | 41 | 新潟 | 273.0 |
東北南部 | 仙台 | 6月11日 | 7月21日 | 40 | 仙台 | 246.2 |
東北北部 | 仙台 | 6月15日 | 7月26日 | 41 | 青森 | 162.2 |
この期間の降水量は年間の極大を示し、福岡で五〇六・八ミリメートル、飯塚で五八二・九ミリメートルである。豊津ではこの期間の統計はないが、六月の降水量の平均が三二八・一ミリメートル、七月が三二〇・五ミリメートルであり、六月と七月の降水量合計六四八・六ミリメートルのかなりの割合が梅雨季に降るものと思われる。六月と七月の降水量は全年の一八六四・九ミリメートルの三五パーセントに相当する。