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人類の発生と進化

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地球が誕生してから現在に至るまで約四五億年の時間を経ている。三五億年前に生物は発生し、進化を遂げて多様な種が生み出されてきた。約六五〇〇万年前の中世代白亜紀の終わりとともに全盛を極めた爬虫(はちゅう)類が衰退し、代わって哺乳(ほにゅう)類が新生代を通じて繁栄する。人類もその中の一種である。サルと人類の分岐点にあたる時期として地質学上の新第三紀鮮新世(約五三〇万年から約二〇〇万年前)の初期が考えられている(第1表参照)。分岐した初期の人類は猿人(アウストラロピテクス)と呼ばれており、従来発見されていた最も古い猿人は約四〇〇万年から三五〇万年前の東アフリカに分布したアファール猿人とされてきた。しかし、一九九四年(平成六年)になって同じ東アフリカのエチオピアで約四四〇万年前の頭や腕の骨が発見され、ラミダス猿人と名付けられた。この発見により、猿人が二足歩行を始め、人類への進化を始めたのが約五〇〇万年前とする人類学の一説が有力となってきた。
 人類はその後、歩行から解放された二本の手によって道具を製作・使用し、急激な進化を遂げる。猿人はアフリカ各地に広がる一方、約一五〇万年前には原人(ホモ・エレクトス)が登場する。原人は居住地域をアジアやヨーロッパに広げるとともに、地域によって差異を示すようになる。ジャワ原人(ピテカントロプス)はほぼ完全な直立歩行をしていたとされ、約五〇万年前の北京原人(シナントロプス)は火を使用していたとされている。
 

第1表 地質年代と人類の進化

 約一五万年前になるとより複雑な石の道具を使用する旧人が現れる。イラクのシャニダール洞窟(どうくつ)で発見されたネアンデルタール人は、死者の埋葬に際して花を添えるなど、死者を丁重に葬る風習を持っていた。現在の人類の直系の祖先であるクロマニヨン人や柳江人などの新人が登場するのは、約三万年前のことであった。ヨーロッパの人々の祖先であるクロマニヨン人は洞窟絵画や骨角器に施した線刻画、ヴィーナス像の製作など、芸術的才能を発揮していた。