人類はその後、歩行から解放された二本の手によって道具を製作・使用し、急激な進化を遂げる。猿人はアフリカ各地に広がる一方、約一五〇万年前には原人(ホモ・エレクトス)が登場する。原人は居住地域をアジアやヨーロッパに広げるとともに、地域によって差異を示すようになる。ジャワ原人(ピテカントロプス)はほぼ完全な直立歩行をしていたとされ、約五〇万年前の北京原人(シナントロプス)は火を使用していたとされている。
第1表 地質年代と人類の進化
約一五万年前になるとより複雑な石の道具を使用する旧人が現れる。イラクのシャニダール洞窟(どうくつ)で発見されたネアンデルタール人は、死者の埋葬に際して花を添えるなど、死者を丁重に葬る風習を持っていた。現在の人類の直系の祖先であるクロマニヨン人や柳江人などの新人が登場するのは、約三万年前のことであった。ヨーロッパの人々の祖先であるクロマニヨン人は洞窟絵画や骨角器に施した線刻画、ヴィーナス像の製作など、芸術的才能を発揮していた。