旧石器人の主要な道具は石器であるが、石器の製作技術は人類の進化とともに、しだいに複雑・多様になっていった。
猿人の使用した石器は、礫(れき)の周辺を打ち欠いて刃を作りだした石核石器が多く、一部では礫からはぎ取った破片に簡単な加工を施した剝片(はくへん)石器も用いられていた。原人段階になると、ヨーロッパのアブヴィルア文化・シュール文化では新たに握斧(あくふ)と呼ばれる石器が作られる。この石器は礫の表面の大部分を打ち欠いて、平坦に加工した石器である。これらの石核石器や握斧が主に作られた時代を前期旧石器時代と呼んでいる。
約八万年前から三万五〇〇〇年前の中期旧石器時代になると、定形化した剝片石器が作られるようになる。フランスのルヴァロア遺跡ではあらかじめ亀甲形に製作された石核から、ほぼ直角に剝離して石器の素材を作っている。
三万五〇〇〇年前から一万二〇〇〇年前の後期旧石器時代では、剝片をより規格的に多量に作りだす石刃技法が誕生する。この技法で作られる石器は、縦長の柳葉形ないし短冊形をなす薄い剝片で、数個ないし十数個程度を木の棒などに取り付けて使用していた。