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旧石器時代の自然環境

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人類は地質年代でいう新生代新第三紀の後半の鮮新世に登場するが、それに続く第四紀更新世は、非常に寒い氷期と現在よりもやや暖かな間氷期とが交互に繰り返された時代で、氷河時代とも呼ばれる。氷期には日本列島のような中緯度地方で気温が約八度、極地では一〇度以上も下がっていたといわれ、海面は一〇〇メートルも低くなっていた。
 

第1図 更新世末期の日本列島
(町田洋氏原図)

 この時期日本列島は大陸と陸続きになっていて、動物や人類が行き来していた(第1図参照)。約三〇万年前の中期更新世には黄海や朝鮮半島方面から朝鮮海峡や対馬海峡の陸橋を渡って、ナウマンゾウやオオツノジカなどが日本列島に渡来した。長野県野尻湖(のじりこ)・群馬県上黒岩(かみくろいわ)や瀬戸内海の海底からこれらの動物の骨が発見されている。九州でも大分県大野町の代の原(だいのはる)で約三万七〇〇〇年前のナウマンゾウの骨が発掘されている。約一三万年前に始まった最終間氷期が続くとともに朝鮮海峡ができ上がり、南方からの動物の移動は途絶えた。しかし、北方の宗谷海峡と間宮海峡は、約一万三〇〇〇年前まで陸橋が存在し、マンモスゾウ・ヘラジカ・ヒグマなどの動物が列島に渡ってきた。日本列島が完全に大陸から切り離されたのは約一万年前の縄文時代に入ってからのことである。
 また、第四紀更新世後期の日本列島では、古富士・大山(だいせん)・九重・阿蘇などの火山活動が活発であった。そしてこれらの火山から噴出された溶岩や火山灰は各地に降り積もっていった。例えば、約四万五〇〇〇年前に大山から噴出した大山倉吉火山灰は、関東・北陸地方まで広がっている。また、約二万二〇〇〇年前に現在の鹿児島県地域から噴出した姶良丹沢(あいらたんざわ)火山灰は、遠く東北地方から朝鮮半島までの非常に広い範囲に降り注いでいる。