このような気候の温暖化によって、日本海側を中心に多量の雪がもたらされたが、降水量の変動も原因となって自生する植物も変化していった(第1図)。それまでの冷温帯落葉広葉樹林に代わって、縄文時代に入ると暖温帯常緑広葉樹林(照葉樹林)が拡大した。九州を除く西日本で照葉樹林が優勢を占めたのは約七〇〇〇年から六〇〇〇年前であった。照葉樹林では、シイ・カシなどの堅果類が豊富に実り、中部地方から北海道の落葉広葉樹林でも、ブナ・ナラ・クリ・クルミなどが取れた。ほかにも、ヤマイモ・サトイモ・ユリ根・カタクリ・クズなどが自生し縄文人の食料となっていたと考えられる。
第1図 縄文時代の日本列島の植生図と古地理の変遷
(安田喜憲氏原図)