先述したとおり、九州の縄文時代草創期には隆起線文・豆粒文・爪形文・条痕文などの土器群が作られる。長崎県福井洞穴の第3層からは細石器とともに隆起線文土器が出土し、一万二七〇〇±五〇〇年BPの放射性炭素測定年代が示されている。また、その上の第2層でも爪形文土器に細石器が伴う。これは、旧石器時代の終末と縄文時代の開始が同時進行したことを物語っている。
この時期の遺跡は非常に少なく、九州全体でもまだ二十数か所にとどまっており、鹿児島県東黒土田遺跡で貯蔵穴が発見されてはいるが、明確な住居跡は確認されていない。福岡県内では、春日市門田遺跡で器高一八・六センチメートルの浅鉢の爪形文土器が出土している。