木製農耕具(第6図参照)のうち、鋤(すき)(14~16)は長い柄の先端に一直線に刃がつくスコップ状の形態をなす。鍬(くわ)(17~21)は柄に対して直交または斜交する方向に刃がつくもので、現在の鍬とほぼ同じ形態である。刃先は二またや三またに分かれるものがある。素材となる樹種は、アカガシ・アラカシ・イチイカシなどである。後期になると田の表面を平らに整えるえぶりや深田へ堆肥を踏み込むための大足(おおあし)、深田のなかを歩くための田下駄(たげた)(25)が登場する。
また、竪杵(たてきね)や臼(うす)も木製品があり、石斧や鉄斧の柄にも硬くかつ弾力性に富むアラカシ属が使用されている。木工用轆轤(ろくろ)により鉢や椀、高坏(たかつき)(24)などの容器類の製作が容易になり、材料にはケヤキ・サクラ・ヒノキなどが使用されている。
第6図 弥生時代の鉄器と木製品
短甲や弓・剣の把頭などの武器にも漆(うるし)を塗って仕上げた木製品がある。