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集落

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集落の形態は、そこに生活する集団の内容や立地環境によっても異なるとともに、時期によっても変化する。
 前期前半には一地域の中に幾つかの小集落が散在するが、前期後半から中期にはそのなかで半径数百メートル規模の拠点集落が出現してくる。拠点集落と周辺集落とは水田経営などの生産活動を通して密接に結び付き、人口の増加や生産地の拡大に伴いこの集団から一ないし数家族が出て、新しい集落が作られる。
 環濠(かんごう)集落は福岡市板付遺跡のように前期初頭からみられるが、前期後半から中期にかけて佐賀県吉野ケ里(よしのがり)遺跡や甘木市平塚川添(ひらつかかわぞえ)遺跡のような拠点集落を中心に、環濠を何重にもめぐらすものが増加してくる。これは後述するように、集団間や地域間の安定した状況がしだいに変化していったことと関係している。
 西日本の特に瀬戸内沿岸から近畿で中期中ごろから後期にかけて多く発見されている集落に高地性集落がある。高地性集落は香川県紫雲出山(しうでやま)遺跡に代表されるように、平地から数十メートル以上の高い丘陵や山の上に営まれる比較的小規模の集落で、軍事的・防御的役割を果たす見張りおよび通信施設と考えられている。
 中期後半から後期の環濠集落や高地性集落は当時の社会的な緊張状態や争乱が生みだした集落である。