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前期の古墳

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箸墓古墳は前期のなかでもごく初期の代表的な前方後円墳である。墳丘は全長二七六メートルで、前方部の先端部は「撥形(ばちがた)」に開く特徴を持つ。やや下位の首長になると、前方後方墳を築造する。岡山市備前車塚古墳は丘陵頂上部に造られた前方後方墳で、全長が四八メートルとやや小形であるが、前方部は同様に「撥形」をなす。
 前期古墳の副葬品としては、四世紀後半の奈良県桜井市メスリ山古墳の出土品がよく知られている。この古墳は全長二三〇メートルを計る王の墳墓であり、儀仗を含む碧玉製品三二点・刀剣二本・鉄製槍先二一二点・銅鏃二三六点・石鏃五〇点・鉄製工具一五〇点などが出土した。武器が多いことは、被葬者は武人としての性格が強い人物であることが推定される。更に、工具の多さは、高度な土木技術を背景に、被葬者が開発事業にも携わっていたことを示している。一方、祭祀的な色彩を持つ古墳としては、京都府山城町椿井(つばい)大塚山古墳がある。この古墳は全長約一八〇メートルの前方後円墳で、大刀七点以上・剣十数点・鉄鏃二〇〇点以上、小札革綴胄(こざねかわとじかぶと)などの武器・武具のほか、農工具や漁具とともに、三角縁神獣鏡三二面以上が出土している。この時期の鏡は祭祀用具であるが、当古墳の三角縁神獣鏡の出土数は前期古墳のなかで最も多い。