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衣服と装身具

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古墳時代の服飾を知る手がかりには、人物埴輪や石人、装飾古墳の人物画などがあるが、いずれも中期後半以降の資料である。また、人物埴輪などで表現された服飾(第9図)は、古墳の被葬者の周辺に生活する人々のものが多く、地域社会で上位に位置する人々に偏る傾向がある。
 盛装の衣服は、男性では上衣が腰下ぐらいのたけで左衽(おくみ)の前合わせとなっており、下衣の「褌」はゆったりとしたズボン状のものである。女性は、上衣は男性とほぼ同じものであるが腰に帯を締めない場合もある。下衣の「裳(も)」は、足元まで長く広がる巻きスカート状の衣服である。一方庶民の衣服は、農民の埴輪からみるかぎり、方形の布を綴じ合わせただけで装飾性のない貫頭衣風のもので、腰にひもを結んでいる。髪は男女とも長髪で、盛装の男性の場合、両耳付近で棒状に束ねた「美豆良(みずら)」が一般的である。女性の埴輪では「つぶし島田」の髪型や、櫛をさしたものがある。
 装身具では、古墳の副葬品のなかに玉類や金属製品がみられる。耳飾りとしては、垂飾付き金製耳飾りや銅芯金・銀張りの耳環がある。首飾りでは勾玉・管玉・小玉などを連ねたものが多く、腕飾りには金属製品と玉類からなるものとがある。これら以外にも、頭にかぶるものでは、金製の冠や金銅製の冠帽があり、布製の帽子も埴輪にみられる。帯や履にも金銅製のものがあるが、布または皮状のものを表現する埴輪もある。

第9図 埴輪の服飾