ビューア該当ページ

調査経過と遺跡の概要

262 ~ 264 / 1391ページ
当古墳の存在は、その大きさゆえ以前から知られており、大正期には内部の石室が大師講の祭場として利用されていた。調査時点での遺跡の保存状況は、全体としては良好であったが、墳丘の北東側が宅地によって削平され、西側も道路によって破壊されていた。また、石室は複室構造の横穴式石室であったが、前室部の側壁上半と天井部の石が完全に取り去られていた。
 発掘調査は環境整備の事前調査として、破壊された石室を復元するとともに、墳丘の構造を解明した後、極力築造当時の姿に戻すために、平成四年・五年度の二か年にわたって実施した。
 調査方法は、墳丘の測量とトレンチ調査、石室については発掘を行った。墳丘のトレンチ調査は、葺石および断面構造を確認するためのもので、東辺・北辺・西辺の主軸にそれぞれトレンチを設け、東辺の上下の段築部分に拡張区を設定した。また、各段築部分のコーナーの状況を確認するために、南東・北東・南西の各コーナー部の上下段にトレンチを設定した。更に、墳丘の裾部の位置と周溝・周堤の構造・規模などを調べるために、南東コーナー部と墳丘前面・墳丘東辺にもトレンチを開けた(第13図参照)。

第13図 甲塚方墳墳丘測量図

 石室については、玄室から墓道にかけて流土が厚く堆積していたため、墓道部分から埋まった土を取り除き、築造当時の床面を検出した。
 遺跡の概要をまとめると、墳丘については平面形が長方形をなす方墳で、長さ約四六・五メートル、幅三六・四メートル、高さ約九・五メートルで、周溝・周堤まで含めると長さ約七二メートル、幅約六三メートルを計る。また、墳丘は三段に分けて築造され、各段の間には斜面上位側に土留めの列石を積み上げ、その外方に石敷きの平坦面を設けている。墳丘の方位は、主軸がほぼ南北方向を向いている。
 石室は巨石を使用した複室構造の横穴式石室で、全長一五・四メートルを計る。玄室は、長さ四・四メートル、幅三・七メートルの正方形に近い平面形をなし、高さは四・六メートルを計る。
 調査によって判明した各部分の詳細は次のとおりである。