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石室

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石室は墳丘の中軸線上に位置し、南に向かって開口する。玄室の奥壁が墳丘の中心部にあたり、玄室の床面は著しく攪(かく)乱され、前室の側壁は腰石を残すのみで、上部は破壊されていた。墓道部分も本来両側壁に高い石積みがあるのが一般的であるが、大部分取り去られていた(第16図)。

第16図 甲塚方墳石室実測図

 玄室は床面の入り口側半分の敷石が完全に取り去られていた。奥壁側に残っていた敷石は、径五センチメートル前後の細かい円礫と一〇~二〇センチメートル程度の礫である。前室との境には一枚の框(かまち)石が敷かれている。床面は標高四二・七メートルの高さにあり、長さ四・四メートル、幅三・七メートルの正方形に近い平面形をなす。奥壁は、腰石が高さ一・四~二・一メートルの巨石の一枚石で、その上部には床からの高さ三・四メートルまで、垂直に二、三段の石積みをする。更にその上部には石材を手前に水平に持ち送って積み、その上に厚さ〇・四メートル前後の角礫を積んでいる。左右の側壁は、腰石が高さ一・五~一・六メートルの二個の巨石で構成され、標高四四・三メートルで高さをそろえている。その上部には奥壁同様、天井まで持ち送りぎみに四、五段の石積みを行う。天井は一枚石を中心部に載せ、奥壁側の幅〇・四メートルのすき間を小形の石材で埋めている。玄室の高さは床面から四・六メートルを計る。
 前室も床面の半分以上が攪乱されているが、敷石は中小二種類の礫が残っている。平面形はややいびつで、右側壁の長さが一・七メートル、左側壁の長さが二・一メートルと、左右の長さが異なる。幅は二・九メートルと、玄室より狭くなっており、側壁は左右ともに腰石一枚のみを残す。前室の入り口には通路部分の幅約一・四メートルを隔てて、厚さ〇・七~〇・八メートルの袖石が左右に立っているが、ともに上部は破壊されている。
 墓道も側壁の破壊が著しく、床面も径二〇センチメートル前後の礫がまばらにあるが、敷石の有無は不明である。墓道の幅は前室側で二・〇メートル、中央部でやや狭く一・七メートルとなり、入り口部分では再び開き二・一メートルである。
 床面の高さは、玄室・前室までは一定であるが、墓道入り口はしだいに低くなり、玄室床面とは〇・六メートルの比高差がある。また、石室の石材は大部分花崗岩であり、同様の石材は八景山周辺に多量に露頭している。