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調査方法と遺跡の概要

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当古墳群はそれまでの現地踏査により、少なくとも二基の円墳と一基の前方後円墳の存在が確認されていた。その後、樹木の伐採が終了した本調査前に再度分布調査を行った結果、地表面の観察などから円墳八基が存在すると予想された。
 調査は、丘陵斜面が非常に急峻(しゅん)であったことから、尾根すじの平坦面を対象として実施した。調査対象地は、南部に踏み分け道が一本通っているだけで、ほとんど後世の地形の改変を受けていなかった。また、個々の古墳については石室の天井部を破壊されているものもあったが、盗掘を受けていない古墳もあった。
 調査の結果検出した遺構は、弥生時代後期の石棺墓・石蓋土壙墓・土壙墓・祭祀遺構などからなる墓地と、古墳時代後期を中心とした五世紀後半から七世紀前半にかけての円墳九基・小石室四基、ならびに石材を採取した跡二か所と採取した石材を集積した跡一か所などである(第三章第35図参照)。

第19図 北垣古墳群第一次調査全景


第20図 北垣古墳群第二次調査全景

 
第1表 北垣古墳群古墳一覧表
(単位:メートル)
遺構墳丘長径短径高さ周溝有無深さ石室構造長さ方位
玄室長さ高さ玄門高さ前室長さ高さ時期
番号遺物備考
1号墳墳丘〔8.6〕8.10.5周溝0.6~1.80.610.5石室複室横穴式(7.06)N-31°-W
玄室2.201.96(1.77)玄門0.600.82前室0.730.841.11時期6世紀第Ⅱ四半期
遺物須恵器(杯身2・杯蓋1・〓1・甕2)、土師器(高杯2・壺2・甕2)、大刀1・鏃2・ガラス小玉1備考
2号墳墳丘12.712.23.2周溝0.8~2.40.3不明石室複室横穴式(6.05)N-43°-W
玄室2.441.952.23玄門0.621.01前室0.851.671.47時期6世紀第Ⅲ四半期
遺物須恵器(杯身14・杯蓋10・高杯4・提瓶5・直口壺1・同蓋1・壺1・〓1・甕2)、大刀1・鏃35、馬具3、鑷子1、刀子4、備考10体以上埋葬
不明鉄製品4、耳環3、管玉1、ガラス小玉45
3号墳墳丘不明不明不明周溝不明不明不明不明石室竪穴系横口式不明S-32°-E
玄室1.910.70(0.77)玄門前室時期5世紀第Ⅳ四半期
遺物刀子1備考
4号墳墳丘〔9.8〕(9.2)2.1周溝1.0~2.40.4不明石室複室横穴式(6.30)N-42°-W
玄室2.362.092.27玄門0.550.97前室0.631.331.26時期6世紀第Ⅱ~Ⅲ期
遺物須恵器(杯身10・杯蓋10・高杯8・同蓋3・提瓶4・平瓶1・横瓶1・甕)、剣1・鏃1、馬具4、不明鉄製品4、石匙1、備考4体以上埋葬
砥石1、耳環1、勾玉1、ガラス玉1、ガラス小玉6
5号墳墳丘11.6〔10.0〕1.9周溝1.9~2.70.615.9石室複室横穴式7.09N-36°-W
玄室2.401.962.16玄門0.791.00前室0.751.131.08時期6世紀第Ⅲ四半期
遺物須恵器(杯身8・杯蓋11・高杯3・提瓶2・平瓶1・〓1・長頸壺1・直口壺1・甕)、土師器(小片)、鏃2、刀子2、耳環2備考3体以上埋葬
6号墳墳丘不明(12.4)0.7周溝無?石室複室横穴式(3.86)N-80°-W
玄室2.301.95(1.22)玄門0.58(0.77)前室0.81不明(0.63)時期6世紀第Ⅱ~Ⅲ期
遺物須恵器(杯身7・杯蓋6・高杯1・同蓋1・壺1・甕1)、土師器(小壺1)、大刀1・鏃1、馬具3、刀子1備考4体以上埋葬
7号墳墳丘不明不明不明周溝無?石室竪穴系横口式不明N-32°-W
玄室2.071.03(0.70)玄門前室時期5世紀第Ⅳ四半期
遺物須恵器(甕1)、剣1、鏃5、馬具1、鑷子1、刀子1備考
8号墳墳丘(11.0)(10.6)(1.1)周溝不明不明不明不明石室複室横穴式8.33N-43°-W
玄室2.122.14(1.56)玄門0.600.82前室0.721.07(1.04)時期6世紀第Ⅱ~Ⅲ期
遺物須恵器(杯身4・杯蓋5・高杯10・同蓋3・提瓶5・平瓶1・直口壺1・甕4)、土師器(高杯1)、鏃8、腕輪1、滑石小玉1備考
9号墳墳丘〔9.1〕不明(0.7)周溝1.0~1.60.2不明石室複室横穴式(5.50)N-47°-W
玄室1.881.91(1.17)玄門0.92(0.88)前室0.641.58(0.89)時期6世紀第Ⅳ四半期
遺物須恵器(杯身1・杯蓋1・高杯5・平瓶1・〓2・直口壺1・甕1)、土師器(椀1)、耳環2備考