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鉄の生産

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築城町松丸F遺跡は城井川中流域の標高八七メートル前後の丘陵先端部に位置する。時期的には七世紀初頭から七世紀末にかけて継続し、製鉄炉一基と燃料の炭を焼いた窯跡六基などが発見されている。炉跡は底部が全長一・四メートル、幅〇・三~〇・五五メートルの長方形箱形炉である。炉の周壁は高温を受けて青灰色に変色し、その外方も赤変している。窯跡は六基とも側面に八個の開口部を持つ横口付窯跡で、1号窯跡は九・四メートルの窯本体に〇・七メートルの煙出しがつくものである(第53図)。なお、1号炉跡近くの土壙には原材料となる三七・三キログラムの砂鉄が保存されていた。松丸F遺跡で発見された大型の箱形炉は、東北地方を中心に七・八世紀代にみられるが、西日本では中国地方を中心に江戸時代のたたらへと発展する形式の炉である。

第53図 築城町松丸F遺跡1号窯跡