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後期の主要古墳

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六世紀代の主要古墳には、豊前国の行橋市八雷古墳(全長約八〇メートル)・勝山町庄屋塚古墳(推定全長約九〇メートル)・同町扇八幡古墳(全長五八・八メートル)、筑前国では王塚古墳(推定全長約八六メートル)、筑後国では甘木市鬼の枕古墳(全長五六メートル)・吉井町日の岡古墳(全長約八五メートル)・八女市岩戸山古墳(全長約一三八メートル、第58図)などの前方後円墳がある。

第58図 八女市岩戸山古墳測量図(八女市教育委員会提供)

 六世紀末から七世紀前半の時期では、豊前国の勝山町綾塚古墳(径約四一メートル)・同町橘塚古墳(径約四〇メートル)・豊津町甲塚方墳(全長四六・五メートル)、筑前国の津屋崎町宮地嶽古墳(径約三四メートル)などの円墳・方墳が築造されている。また、この時期の古墳の内部主体は、大部分が横穴式石室で、中葉以降複室構造の横穴式石室が急増する。
 五、六世紀代に石室壁面や石棺に浮き彫りや線刻・彩色などを施す装飾古墳は、北部から中部九州の古墳文化の特徴である。五世紀後半では有明海や不知火(しらぬい)海沿岸の石人山古墳・熊本県嘉島町井寺古墳などがある。
 横口式家形石棺や障槨式石室に直弧文・同心円文などを描き、彩色する場合が多い。六世紀中葉の日の岡古墳では、奥壁に赤や青・白で巨大な同心円文と蕨手文のほか大刀・盾・靫などの武器や武具類が描かれている。筑後川流域では、ほかにも吉井町珍敷塚古墳・同町鳥船塚古墳がある。遠賀川流域の王塚古墳は六世紀中葉に属する装飾古墳の最高傑作といわれ、円文・三角文・蕨手文・双脚輪状文などの幾何学文で壁面を彩り、靫・盾・弓と大刀のほか、袖石には五頭の馬と乗馬した人物を描いている。装飾古墳はほかにも筑紫野市五郎山古墳(第59図)・若宮町竹原古墳などがよく知られている。

第59図 筑紫野市五郎山古墳石室壁画実測図

 また、筑後・肥前・肥後・豊後などの五世紀から六世紀の古墳では、阿蘇溶結凝灰岩を加工した石人・石馬と呼ばれる彫刻が墳丘に立てられることがある。石人山古墳や岩戸山古墳がその代表的な例で、人物(武装・裸体)、動物(馬・猪?・犬?・鶏・水鳥)、器財(盾・靫・刀・蓋・翳)などがある。