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大宰府の官人と機構

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大宰府の官人については養老職員令六九大宰府条の規定によると、主神(かむつかさ)・帥(そち)以下五〇人が配置されている(第1表)。これは各国の国衙の役人数をはるかに上回るものであるが、このほかに職員令にない書生・使部・仕丁などを入れると政庁関係者数は二〇〇〇人前後に達したと推定されており、律令制下での最大の地方官司であり八省と相並ぶほどの一等官庁であった。
 次に大宰府帥の職掌については同じく職員令にみられるが、次のようなものであった。
   「祠社のこと、戸口の簿帳(ふちょう)のこと、百姓を字養(じよう)せむこと、農桑(のうそう)を勧(すす)め課(おは)せむこと、所部を糺(ただ)し察むこと、貢挙(ぐこ)・孝義(こうぎ)・田宅(でんたく)・良賤(ろうせん)・訴訟(そしょう)・租調(そちょう)・倉廩(そうりん)・徭役(ようやく)・兵士(ひょうじ)・器仗(きじょう)・鼓吹(くすい)・郵駅(ゆうやく)・伝馬(でんめ)・烽候(おうこ)・城牧(じょうぼく)・過所(かしょ)・公私の馬牛(くうしのめご)・闌遺(らんくい)の雑物(ぞうもち)のこと、及び寺・僧尼の名籍(みょうせき)のこと、蕃客(ばんきゃく)・帰化・饗讌(こうえん)の事。」
 そのほかの官人の職掌については、まとめると第1表のようになる。
第1表 大宰府の官人
官名位階職掌
主神正七位下1諸の祭祀の事
従三位1諸政および蕃客・帰化・饗讌の事
大弐正五位上1帥に同じ
少弐従五位下2大弐に同じ
大監正六位下2府内を糺判、文案審署、稽失を勾え、非違を察する
少監従六位上2大監に同じ
大典正七位上2事を受けて上抄、文案勘署、稽失を検出
少典正八位上2大典に同じ
大判事従六位下1犯状を案覆、刑名を断定、諸の争訟を判る
少判事正七位上1大判事に同じ
大令史大初位上1判文を抄写
少令史大初位下1大令史に同じ
大工正七位上1城隍、舟檝、戎器、諸の営作
少工正八位上2大工に同じ
博士従七位下1経業を教授、学生を課試
陰陽師正八位上1占筮し、地を相する
医師正八位上2診候し、病を療する
算師正八位上1物の数を数え計る
防人正正七位上1防人の名帳、戎具、教閲及び食料田のこと
正八位上1防人正に同じ
令史大初位下1佑に同じ
主船正八位上1舟檝を修理
主厨正八位上1醯・醢・韲・葅・醬・豉・鮭などの事
史正20公文を繕写し、文案を行署すること

 このような官人で構成される役所としては、政庁・学校院・蔵司・税司・薬司・匠司・蕃客所・修理器仗所・客館・兵馬所・主厨司・主船司・警固所・大野城司・貢上染物所・作紙所などがあった。