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国府の官人

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国府には中央から国司が派遣されて来て地方行政をつかさどるが、普通は長官(守(かみ))・次官(介(すけ))・判官(掾(じょう))・主典(目(さかん))の四等官を指している。そのほか史生・国博士・国医者もいたが国司の定員は大国・上国・中国・下国という国の等級によって差があり、またそれぞれの官職の相当官位やそれに伴う職分田なども異なった(第3表)。任期は『大宝令』では六年であったが、慶雲三年(七〇六)には四年と改められ、平安初期までに数度の改正が行われたが、宝亀十一年(七八〇)には九州諸国の国司のみ五年とされた。しかし実際的には奈良時代では三年に満たない任期といわれ、更に平安時代に入ってからは遙任(ようにん)が一般化していって国司制そのものが形骸化(けいがいか)した。国司の職掌については、全体的には郡司を統督して庶政一般をつかさどるが、『令義解』にみる具体的な職務内容は「守」を中心に国内の祭祀(さいし)・勧業・戸籍・徴税・訴訟・軍事・交通等々多岐にわたっている(第4表)。
第3表 国司職階一覧
等級職員員数位階職分田事力
大国1人従五位上 2町6段8人
1人正六位下 2町2段7人
大掾1人正七位下
}1町6段5人
少掾1人従七位上
大目1人従八位上
}1町2段4人
少目1人従八位下
史生3人   6段2人
上国1人従五位下 2町2段7人
1人従六位上 2町6人
1人従七位上 1町6段5人
1人従八位下 1町2段4人
史生3人   6段2人
中国1人正六位下   2町6人
1人正八位上 1町2段4人
1人大初位下   1町3人
史生3人   6段2人
下国1人従六位下 1町6段5人
1人少初位上 1町3人
史生3人   6段2人
(『養老令』『延喜式』による)

第4表 国司の職掌
守(長官)管内の祠社、戸口、簿帳、百姓を字養し、農桑を勧め課せ、所部を糺察すること、貢挙・孝義・田宅・良賤・訴訟・租調・倉廩・徭役・兵士・器仗・鼓吹・郵駅・伝馬・烽候・城牧・公私の馬牛・闌遺の雑物および寺・僧尼の名籍のことを掌るが、特に陸奥・出羽・越後等の国は、それ以外に饗給・征討・斥候を掌り、壱岐・対馬・日向・薩摩・大隅等の国は別に鎮捍・防守および蕃客の帰化を掌る。また三関国(伊勢・美濃・越前)は関剗および関契のことを掌る。
介(次官)長官である守を補佐し、守が不在のときはその代行を勤める。
掾(判官)国内を糺判するほか、文案を審署し、稽失を勾え、非違を察することを掌る。
目(主典)事を受けて上(の)せ抄(しる)し、文案を勘署し、稽失を検出し、公文を読み申すことを掌る。
史生目の下で雑務を処理する。