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国府の保存と課題

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国府の政庁地区は、平成六年度までの調査成果をもとに平成七年度には史跡公園として保存・整備されることになった。これまでの経過は、当初調査は圃場整備を前提とした事前調査であり、政庁の確認を受けて、その重要性を地元の地権者・換地委員に理解を得るとともに、積極的な協力を得て、当該地区約一万八〇〇〇平方メートルの保存と町の用地取得が可能となった。整備の内容は、専門家からなる豊前国府跡保存整備指導委員会や町の文化財保護委員会の指導を仰ぎながら、繰り返し検討された。
 基本的に今回の整備は、発掘調査によって確認された具体的な遺構の保存を重点に、将来史跡公園として更に充実させることが可能な余地を残す基礎的な整備である(第20図)。公園内全体は、政庁の保存と一部復元を行った地区を中心に、その南側に公園の活用を図る便宜施設を設置した地区を設定し、政庁周辺部には休憩施設や植栽を施した地区を設けている。政庁の保存地区は当時の築地塀の位置に土盛りと低木の植栽をし、調査によって確認された東脇殿と中門は土盛り基壇をした上に木柱の表示をした。遺構が確認されなかった西脇殿と正殿については土盛り基壇のみにとどめている。政庁南側に駐車場・便所などの便宜施設と、国府の全体像を理解できるように説明板を設置した。政庁周辺部の植栽は、北部九州の遺跡における花粉分析調査をもとに、基本的に奈良時代ごろの植生を再現して行った。

第20図 豊前国府跡公園全景パース

 なお、国府関連の遺構は政庁を中心として、半径四〇〇メートル程度の範囲に現在もなお保存されている可能性が高い。特に、政庁南方の国作集落や西方の惣社八幡神社には中心的な市街地の存在も予想されることから、今後も重点的に確認調査を実施していく必要がある。
 また、豊前国分寺を含めた更に広い地域は、奈良・平安時代の約五〇〇年間にわたって豊前国の政治・経済・文化など各方面の中心地域であり、開発にあたっては埋蔵文化財に対する注意が特に必要である。