西海道の官道は大宰府を起点として、畿内へ上る西海道本道、豊前国府へ向かう田河道(豊前路)、豊後国府へ向かう豊後路およびその延長である日向路(西海道東路)、筑後・肥後・薩摩国府を経て大隅国府に向かう西海道西路、肥前国府を経て島原半島に至る肥前路、筑前・肥前の海岸部を経て海路壱岐・対馬に渡る壱岐・対馬路などが放射状に延びている(第29図)。これら以外の、豊前・豊後国府間の道や、肥後北部から豊後南部に至る阿蘇路などは支路と考えられている。また、これとは別に大宰府から田河道を通って豊前国府へ行き、その先豊後・日向・大隅・薩摩・肥後・筑後の各国府を連ねて大宰府に帰る九州一周路を西海道本道とする考え方もある。
これらの各官道のうち西海道本道は大路であり、各駅には駅馬二〇疋(ぴき)が置かれたが、大同二年(八〇七)十月の太政官符によって一五疋に減らされている。なお、そのほかの官道は小路であり、各駅家の駅馬は五疋であった。