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戸籍の作成と内容

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造籍はそれを行う年の十一月上旬から開始して翌年の五月末までに完成するように定められており、それぞれの国の国司の責任で行われた。しかし実際的には郡司が国司の命を受けて造籍作業の中心となって里長の補助の下に各戸主に戸口の資料を提出させたと考えられている。戸籍は三通作成し、一通は国衙に保管し、二通は中央に送られて太政官を経申して更に民部(みんぶ)省と中務(なかつかさ)省に送られた。
(大宝二年豊前国戸籍の一部  戸主丁勝馬手の戸)
  戸主丁勝馬手(ちょうのすぐりうまて)、年肆拾肆(四十四)歳、  正丁 課戸
  男丁勝吴、年拾貳(十二)歳、      小子 嫡子
  男丁勝赤根(あかね)、年玖(九)歳、      小子 嫡弟
  女丁勝羊賣(ひつじめ)、年貳(二)歳、      綠女
  女丁勝鳥賣(とりめ)、年壹(一)歳、      綠女 上件二口、嫡女、
  從子丁勝卷手(まきて)、年叅拾柒(三十七)歳、   正丁
  母丁勝細目賣、年陸拾(六十)歳、丁女
  妻阿射弥勝布施賣(あざみのすぐりふせめ)、年叅拾貳(三二)歳、  丁妻
  男丁勝宇提(うて)、年壹(一)歳、      綠兒 嫡子
  弟丁勝小卷(こまき)、年貳拾貳(二十二)歳、      正丁
  男丁勝宇麻呂(うまろ)、年壹(一)歳、    綠兒 嫡子
妹丁勝廣手賣(ひろてめ)、年貳拾貳(二十二)歳、  丁女
從子丁勝鳥(とり)、年叅拾(三十)歳、  兵士
母大神部牧賣、年陸拾貳(六十二)歳、  老女
大神部菟手(うて)、年貳拾貳(二十二)歳、  殘疾 寄口

[系図]

受田貳町壹叚壹佰柒拾壹〓(二町一段百七十一歩)
3歳以下4~16歳17~20歳21~60歳61~65歳66歳以上
緑児小子少丁正丁老丁又は次丁耆老
緑女小女次女正女又は丁女老女又は次女耆女

 その内容については一般的には戸主を筆頭に一行ごとに直系親や傍系親、その妻妾、戸によって寄口(きこう・よりく)(寄人(よりうど))や奴婢(ぬひ)を氏(うじ)・姓(かばね)・名・年齢の順に記された。奴婢は末尾に列記して所有者が書かれた。身体障害者はその程度によって残疾(ざんしつ)・廃疾(はいしつ)・篤疾(とくしつ)と記し、また兵士となった正丁(せいてい)や位階・官職を有する戸口(ここう)についてはそれも記して、最後に課口(かこう)(正丁・次丁(じてい)・少丁(しょうてい))に分けて一戸の人口を総計した。そして末尾にはその戸の受田面積が記された。戸籍の保存は過去五回の三〇年分を行う規定がある。その後は廃棄処分されて写経所(しゃきょうしょ)などに払い下げられ、裏面が再利用された。