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田令に合わない豊前国の受田

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田令によって公民の受田額が規定され、口分田の班給が行われたが、豊前国の場合は実際の受田額が規定に合っていない。例えば仲津郡丁里の戸主勝馬手の戸を例にとれば、総人数一五人のうち六歳以上の男子が七人、女子が四人、六歳以下の男子(緑児)が二人、女子(緑女)が二人で、受田資格を持つ者は一一人であるため受田総額は一町九段一二〇歩のはずであるが、戸籍に見える受田総額は二町一段一七一歩となっていて大きな食い違いが見られる(457ページ丁勝馬手の戸参照)。令の規定でも土地の寛狭によって「郷土の法」に従ってよいとあるから違反ではないが、このことに関して虎尾俊哉氏は「豊前国の受田額は年齢・課・不課の別なく男女とも戸籍に記載されている限り、男子には一段二三五歩、女子には一段三六歩、奴には一九八歩、婢には一三二歩を班給している」(『班田収授法の研究』虎尾俊哉著 吉川弘文館)としている。しかし「五年以下不給」とする令の規定に違反することに関して「大宝令に先行する浄御原令によったものである」(前掲書)としている。