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F区の調査

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F区は、指定地の中央西部に設定した調査区で、現在の本堂の西側一四メートルにある。この地区周辺には金堂と講堂を結ぶ回廊が存在していた可能性があり、寺域の西辺を区画する施設が確認されることも予想された。
 調査区は幅四・二メートル、長さ一八・二メートルの東西方向のトレンチと幅六・〇メートル、長さ一一・〇メートルの南北方向のトレンチからなる。検出された主な遺構は、掘立柱建物跡二棟・溝一四条と土壙などである(第43図)。

第43図 豊前国分僧寺F区全体図(1/300)

 溝のうちSD4001は、東西トレンチの西側に位置する南北方向の大形溝である。溝は幅二・六~三・二メートルで、深さ一・二メートルを計る。時期は中世に属し、A区のSD2004、D区のSD3001などに連なる一連の溝の東辺をなすものと考えられる。
 掘立柱建物のうちSB4001は、東西トレンチの東半に位置する柱穴群で、二・〇メートルの距離をおいて二条の柱穴列が東西方向に並ぶ。検出された東西の長さは八・〇メートルで、柱穴は径五〇センチメートル、柱抜き跡は径一五~二〇センチメートルと小さい。この建物跡は東西方向に延びる回廊の一部かまたは東西両面に廂部を持つ南北棟の掘立柱建物跡と考えられる。遺構の時期は不明である。
 SB4002は、南北トレンチで検出された南北方向の建物跡である。この建物跡も二・一メートルの距離をおいて並ぶ二条の柱穴列からなり、調査区内で四間分(長さ八・三メートル)を検出したが、南北の調査区外に延びる可能性がある。柱穴は径四〇センチメートル前後である。
 SK4001は、東西トレンチ東端にある、平面形が長さ九〇センチメートル、幅八〇センチメートルの隅丸方形で、深さが八〇センチメートルのピットである。内部の埋土中から中国の宋・明代の銅銭が計約八〇点出土した(第44図)。

第44図 豊前国分僧寺F区SK4001出土銅銭

 F区ではSD4001の南北大溝の東側で柱穴が多数遺存するが、時期的には中世以降のものであろう。