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細川検地

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豊前・豊後に入封した忠興は、慶長六年(一六〇一)正月二十七日、給人に対して、次のような九カ条の「覚」を発している(松井文書)。①給人・代官が、農民から「礼物(れいもつ)」を取ることを禁じる。②人足として恣意(しい)的に「百姓」を搾取することを禁じる。③植え付け用の種籾(たねもみ)など「種食」の貸し付けをする。④毛利・黒田などの「先給人」の手作りの麦を付け立てて回収し、永荒地(えいあれち)の開発者にその麦を給付する。⑤「走(はしり)百姓」の付け立てと居所改めをし、還住(げんじゅう)させること。⑥桑や漆の付け立てをすること。⑦夏成(なつなり)=畑年貢を改めること。⑧馬飼料として藁(わら)・糠(ぬか)の現物を農民より取ること。⑨薪雑事の買い取り、などを規定している。
 細川氏は、入封早々、このような「覚」を発するとともに、検地を実施し、領地の確保と貢納の増収を図っている。領内の総検地は、慶長六年の春から始まり、忠興は、六月二十日、江戸・上方(かみがた)より中津に帰国し、自ら廻郡して検地の状況と鎖国の視察をしている(「松向公綿考輯録(しょうこうこうめんこうしゅうろく)」永青文庫)。検地の実施にあたっては、「検地法度(はっと)」という二三か条におよぶ詳細な施行細則が出されている(広崎文書)。現存する検地帳や「検地法度」を基に、慶長六年の検地の体様をまとめてみよう。
 ① 検地の耕地丈量(じょうりょう)は、太閤検地と同じ一反=三〇〇歩制を採用する。
 ② 検地尺は間竿(けんざお)を原則とするが、場所の条件によっては検地縄を使用してもよい。
 ③ 村位は、「上ノ村」・「中ノ村」・「下ノ村」の三段階制である。
 ④ 地位は、田・畠ともに、上々・上・中・下・下々の五段階制である。
 ⑤ 石盛は、村位が上ノ村の場合、田方は上々田一石六斗、上田一石五斗、中田一石三斗、下田一石一斗、
   下々田九斗で、畠方は上々畠九斗、上畠八斗、中畠六斗、下畠四斗、下々畠三斗、屋敷八斗である。
 ⑥ 検地帳は、田方と畠方(屋敷を含む)の別帳立てと、田・畠・屋敷の三地目を一冊にした二通りがある。
   また、水帳のほか寄帳を作成する。
 ⑦ 郡単位にまとめた検地村目録が作成されている。
 ⑧ 検地帳の提出は、八~十一月に行われ、検地村目録は九月に作成されている。
 細川氏が拝領した表高は三〇万石であったが、検地により九万九五九九石六斗の増石(ぞうこく)・打ち出しをみている。細川氏の慶長検地は、慶長六年のほかに、同十四年(一六〇九)に、荒れ地・新地を中心とした手直し内検を実施している。そして、翌十五年(一六一〇)七月には、永荒地・当荒地など荒蕪地(こうぶち)の開発を進め、公役(くやく)免除を条件に、他国の新百姓移入策を打ち出し、耕地の拡大と年貢増収を図った。寛永検地としては、寛永三年(一六二六)六月二十六日付の「規矩郡之内水町村田方御検地御帳」(北九州市立歴史博物館所蔵)など四冊が残っている。検地帳の記載様式は、慶長六年のものと同様である。次に、細川検地のうち、残存する検地帳の一覧表を示しておこう(第2・3・4表)。
第2表 豊前・豊後国細川藩検地帳―慶長6年(1601)―
郡名日 付検 地 帳 名検地奉行・検地役人冊数所 蔵







慶長 6. 8.17
 
豊前国田川郡内弓削田村御検地帳
 
長岡監物内村山九右衛門尉
 
1
 
九大文化史研究所
(六角文書)
  〃  澤井治右衛門1
  〃  奥田弥九郎1
   8.18  〃  村山九右衛門1
  〃  澤井治右衛門1
   8.19  〃  村山九右衛門1
  〃  具田弥九郎1

 

 
  〃  埴生藤兵衛
     岡田権右衛門
1
 

 

 

 
  〃  岡田権右衛門
     埴生藤兵衛
1
 

 
  〃  小森六右衛門1
   8.19
   8.20

 
  〃  埴生藤兵衛
     岡田権右衛門
1
 

 
   8.20  〃  奥田弥九郎1
  〃  小森六右衛門1

 

 
  〃  岡田権右衛門
     埴生藤兵衛
1
 

 
   8.22
 

 
  〃  埴生藤兵衛
     岡田権右衛門
1
 

 
(表欠)(135行田畠共ニ)1
   9.吉豊前国田川郡御検地村目録1九大中央図書館

慶長 6   京都郡尾倉村検地帳1恵良宏氏
〃(萬治2.6.23)
   写
慶長六年尾倉村御検地水帳写
 
1
 

 



慶長 6. 9. 
 
豊前国宇佐郡山袋村田方御検地帳
 
1
 
山村隆昭氏
(宇佐市山袋)
   9.  
 
豊前國宇佐郡猿渡村畠方御検地帳
 
1
 
田口隆氏
(宇佐市猿渡)
   9.吉豊前国宇佐郡御検地村目録1九大中央図書館
  10.吉
 
豊前国宇佐村田方御検地帳
 
1
 
宇佐神宮
(到津文書)
  11.10
(寛永9.12.朔写)
高家村検地帳
 
検地奉行衆
濱市兵衛
1
 
中島吉之助氏
(宇佐市高家)

慶長 6. 9.吉豊後国国東郡御検地村目録1九大中央図書館

慶長 6.   
 
豊後国速見郡之内木付城付知行分目録
 
1
 
熊大付属図書館
(松井家文書)

第3表 豊後国速見郡由布院検地帳―元和元年(1615)―
郡名日 付検 地 帳 名所 蔵 者










元和元.10.吉豊後国速見郡由布院御検地帳 田方 水地村九大中央図書館
       〃      〃  並柳村 〃
       〃      〃  立石村 〃
       〃      〃  光永村 〃
       〃      〃  乙丸村 〃
       〃      〃  畑村 〃
       〃      〃  幸野村 〃
       〃      〃  妙曽村 〃
       〃      〃  中薗村 〃
       〃      〃  山浦村 〃
       〃      〃  東畑村 〃
       〃      〃  石垣村 〃
       〃      畠方 水地村 〃
       〃      〃  石丸村 〃
       〃      〃小野大平村 〃
       〃      〃  川崎村 〃
豊後国速見郡由布院横灘御検地村目録 〃

第4表 豊前国細川藩検地帳―寛永3年(1626)―
郡名日 付検 地 帳 名検地奉行・横目冊数所 蔵 者


寛永 3. 6.26
 
規矩郡之内水町村
田方御検地御帳
検地奉行蓑田甚丞
横  目服部佐太右衛門
2
 
北九州市立
歴史博物館
  〃
 
規矩郡之内水町村
畠方御検地御帳

 
2