農民にとっては天災で収穫は減っているのに、年貢だけはこれまで以上に取られることになり、生活は急に苦しくなってくる。農民の不満は大きく高まり、もし不満の爆発でも起これば、体制を揺るがす原因になりかねず、体制の維持強化のための施策が必要になってくる。この施策は穢多・非人・九品念仏(くほんねんぶつ)(九品経を唱えて門付(かどづ)けをする僧体のもの)に対する差別法令の発布という形をもって実現した。それは鶏卵代徴収を定め、平均一二・五パーセントの年貢増徴を実施した享保十三年(一七二八)に、農民に対する生活規制の法度書きの追加として発布された。その内容は次のとおりである。
一、近年目明の女、ごぜ(瞽女)の弟子に成、ごぜ同前ニ徘徊仕之段、不届至極ニ〓、急度(きっと)相改、
目明之分ハ其親類へ相渡す可く〓、一類これ無き者御座〓ゞは郡々ニて望之者召し仕い〓様仕る可き事
附けたり
ごぜの手引き拾五歳以上之女ハ停止せしめ〓、尤も他所より入り来り〓目明ごぜの分ハ、見合次
第早速先々へ送り帰す可き事
一、穢多・九品念仏・非人の所へ、何者によらず、一夜の宿も借(か)し申す間敷(まじく)候、若し叶(かな)
わざる子細あらば、其の所の庄屋へ申しいで差図(さしず)を請くべく候、胡乱(うろん)なる者と心付き
候はば召し捕り、早速庄屋方へ相知らせ申すべく候、ほうび申し付くべき事
附けたり
御城下にて穢多、雨天の節は竹の皮笠着用、平日手拭(てぬぐい)・頭巾の一切かぶりもの堅く無
用の事、牛馬の皮を剝ぎ取り候はば、其の殼は早速埋め置くべし、剝ぎ捨てに致し候においては、
急度(きっと)申し付くべく候、並びに、非人は雨天たりとも、一切かぶりもの停止申し付くべき事
一、非人歌をうたい、或はものまねをいたし候事、停止せしむる事
一、近年、非人ども不作法多く、祝儀・不祝儀の家々にて高声過言を申し、無躰(むたい)に乞い請け、其
の上葬送の野辺にて駕籠(かご)・乗り物等まで届き、何角(なにかど)と邪魔(じゃま)を入れ候段相聞こ
え、不届き至極に候、向後諸人の与えざる物を無理に乞い請け候においては、急度仕置(しお)き申し付
くべき事
附けたり
非人小屋、近年家作りに致し候由、左様の家は早速打ち崩し、切家の小屋掛けに仕るべく候、惣
じて非人は藁(わら)または引きさき紙にて茶筌髪(ちゃせんがみ)にゆい申すべき事
一、百姓・町人に対し、穢多並びに九品念仏・非人ども、我がままの次第これ有るにおいては、急度曲事
(くせごと)申し付くべき事
右の趣、村々の庄屋より急度申しつけること
享保十三年申(さる)十二月