解題・説明
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福岡県指定有形文化財(工芸)・昭和58(1981)年3月指定。 この懸仏は彦山修験の一翼を担う小規模霊山として栄えた蔵持山に伝存し、山内伽藍の一つ白山社の尊像として祀られていたとみられています。 径三七・五センチの鋳銅製鏡板の中央に総高二三センチの鋳銅十一面観音坐像をかけ、坐像は唐草透彫りの光背を持ち蓮台を欠いています。左膝脇に花を挿す花瓶があるものの右花瓶は欠失し、鏡板外周は覆輪をまわし上方に二個の吊環座が附いています。鏡板背面には「宝治元年四月日草部国宗」の蹴彫籠字の銘があり檀那や工人名と考えられています。 御正体となる観音像は頭頂仏から膝部まで一鋳するものの両手は別鋳されて肩でほぞ組され、吊環座は魚子地に花を線刻した花先形の座板で、菊形の座金二枚、一二面体の切子環台に吊輪をつけています。 この時期の懸仏は県内でも英彦山神宮蔵の「彦山権現御正体」(建久年間)のほか事例がなく、北部九州の修験文化の遺宝として貴重なものとなっています。
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