石斧(せきふ)は、約三万年前の旧石器時代から用いられていた。森の中に生きる縄文人にとっても重要な道具であることに変わりはない。石斧には「打製」と「磨製」の二種があり、前者は土掘り具、後者は木工具と言われる。したがって文字通りの石斧とは後者に対して用いられるのである。打製石斧(だせいせきふ)は、その形状から撥(ばち)形、分銅(ふんどう)形、短冊(たんざく)形などに分類されているが、柄の付け方の相違に関係しているのかも知れない。磨製石斧(ませいせきふ)は、刃の形態によってさらに片刃(かたば)と両刃(りょうば)に分けられるが、それは手斧(ちょうな)のように用いるか、まさかりのように用いられるかの違いでもある。
なお、前原遺跡の発掘調査では、打製石斧八二点と磨製石斧一二八点の、合わせて二一〇点の石斧が出土している。その多くは縄文時代早期の撚糸文土器の用いられた時期のものであり、磨製石斧の特徴的な存在は注目されて良い。