出産の際には、産着祝いなどといい、一般的には生後三日目に初めて手の通る産着を着せて子どもの誕生を祝ったものであった。生後三日間はまだ誕生を認めたものでなく、産着祝いをして初めて誕生が認められた風習を伝えているものである。帯直は、現在の七五三にあたる行事であり、男女ともに三歳のときに行った。三歳以前は付け紐の着物を着ていたが、帯直で初めて帯を締めた着物を着る行事である。赤ん坊であった幼子が子どもとして認められた行事である。病気見舞いでは、子どもの病気であった疱瘡(ほうそう)の見舞いのものが多く、他には腫れ物など見た目で分かる病気に対するものがほとんどである。
現在ではお祝いやお悔やみの際には、金銭を送ることが多いが、江戸時代には、金銭ばかりでなく、行事の際に使用する酒や料理の材料などを送ることが多い。その他には半紙など購入しなければならないものを贈ることも少なくない。普請祝いでは、縄を贈ることが多く、お祝いを届ける人の半数以上が縄を贈っている。
これらは、行事ごとに一冊の帳面を作り、いつ、誰から、何を、どのくらい貰ったかを記し、お祝いの席で出した料理の献立や掛かった費用を書き留めているものが一般的である。また、行事の裏方として料理を作ったりする人たちに対しては、後日お礼の席を設けることが一般的であったようである。お祝い返しなどの記載は見られないので、同様の行事が行われる際には、同等の品や金銭を贈ることによって家と家の付き合いが成り立っていたようである。
3-170 紐解御祝儀控帳
(岩崎家文書)