召集令状が来て、家族や村の人たちに見送られ戦地に赴く姿、そして凍てつく日々、あるいは灼熱の中、各地を転戦し激しい銃撃戦、その結果、多数の死傷者が出たこと、また、栄養失調やマラリア等の病気にかかり多くの戦病死者が出たこと、そして、終戦を迎え帰国する様子、あるいはシベリア抑留等での壮絶な暮らしぶりが生々しく語られている。
一方、国内でも子供や兄弟を戦場に送り出し亡くした悲しみの様子、鉄器類の供出、勤労奉仕、空襲の体験、衣類、砂糖等の生活物資の配給、食料の困窮した中さつまいも等食べしのいだ当時の食事、そして、教育の場では教育勅語や軍人勅語の暗唱、軍事教練など戦時中の学校教育の状況が克明に記されている。
この本のあとがきに「その行間からは体験した方でなければわからない戦争の悲惨な現実があふれています。改めて平和のありがたさを感じると共に、このような多くの犠牲者があってこそ、今日の平和があるということを忘れてはいけないと思います。(中略)本当の戦争を知らない世代にも広く戦争を知ってもらうことが、二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、大切なことなのではないでしょうか」とある。
豊かな暮らしの中で戦争の記憶も遠いものとなり、次第に風化しつつある現在、平和の尊さについて学び、語り継ぐための貴重な一冊である。
4-87 戦争体験記(平成12年)