[宮代町長 榊原一雄]
一五年の歳月をかけた町史編さん事業もいよいよ完了間近となり、ここに「宮代町史民俗編」を刊行する運びとなりました。これは、ひとえに町民の皆様を始め関係者のご指導、ご尽力の賜物であり、深甚なる敬意を表する次第です。
さて、戦後の高度成長期のなかで工業技術等の発展は著しく、さまざまなものが機械化されるなど人々の生活構造も大きく変化いたしました。当町も首都圏四〇キロにあり、東武動物公園駅を中心とし首都近郊のベットタウンとして急速に都市化が進み、かつての農村風景も変わってまいりました。しかしながら、幸い町内の各地域には長い歳月をかけて先人達が育み伝えてきた農耕社会に根ざした日々の習わしや生活が、今なお年中行事やお祭り、風習として多く見受けられます。こうした行事や風習は、地域の人々のコミュニティを育んできた重要なものであるとともに、宮代町の心を顕著にあらわしているものと言えるのではないでしょうか。
現在、町が進めております「農のあるまちづくり」も、まさに先人達が生活の中で育んできた智恵を生かし循環型環境社会を実現しようとする試みであります。その基盤の一つとして地域の人々のつながり、コミュニティが大きな要素であることは言うまでもありません。また、こうした行事や風習に見られる先人達の英知と情熱は、今に生きる私たちの新しい文化の創出に大きな役割を果たすものと確信いたしております。そうした意味でも、本書が果たす役割は大きいものがあると存じます。
本書がまちづくりの資料として大いに活用されますことをご期待申し上げますとともに、調査に際して多大なるご協力をいただきました多くの町民の皆様、また、本書の刊行にあたりご尽力をいただきました町史民俗部会の委員を始めとする関係各位に厚く御礼申し上げ、ごあいさつといたします。