麦の刈りシンは五月末から六月初めであった。麦はまだ青い状態でも刈ることができる。小麦は、赤くならないと刈ることができないので、六月二〇日ごろである。
麦刈りは、鎌を使って前に進みながら行う。刈った麦は、畝と平行に置いていく。このとき、刈った麦の穂は、その前に置いた麦のカラの部分に乗せるようにして置いた。このため、刈った麦は穂でない方の部分を広げるようにして置く。
刈った後の麦は、乾燥させるために一、二日間、そのまま畑に置いておく。しかし、雨でも降ると家に引き上げなければならない。昔の人は、「麦刈って、一雨掛かれば大豆がいい」といい、麦に雨が掛かるとカリが落ちて、その後に播く大豆のために良いといった。当然、麦のためには良くない。
その後、刈った麦束を一四、五束で一抱えとなり、大束にする。大束にする際には、ユツラと呼ばれるすぐった稲藁を二本結んだもので束ねる。この大束の状態で麦は荷車や牛車などで運搬する。この作業を麦揚げという。