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脱穀・俵装

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 家に持ち込まれた麦の束は、大麦の大束はそのまま積んでおくが、小麦の大束はホダテといって穂を上にして立てて保管する。これは大麦のように積んだままにしておくと、芽が出てしまうためである。

2-10 麦干し 昭和40年代(青木氏所蔵)

 脱穀作業では、最初にガーコンなどといわれる回転脱穀機で穂だけ落とす。この穂を庭に広げて乾燥させ、その後、麦こなしで踏むか、くるり棒・ふるいち棒(唐竿)で叩いてさらに脱穀する。麦こなしは大きな石のローラーのようなもので、庭に麦の穂を撒いた上に掛けると脱穀できるのである。馬や牛のいる家では、麦こなしを使うが、いない家ではくるり棒を使ったようである。麦こなしでもくるり棒でも、よくやればノゲまで取れてしまう。脱穀を終えると、篩に掛け唐箕を通してゴミを取り、庭に干して乾燥させる。
 こうした回転脱穀機やくるり棒を使った脱穀から、発動機付の脱穀機を使うようになっていく。東のある家では、大正一五年ごろに発動機を共同購入したので、これを使用していた。発動機で脱穀すると、ノゲを落としてシイナも選別できたという。脱穀した麦は、ムシロ干しする。庭にムシロを敷いて、その上に麦を干すもので、ムシロ二枚に一斗五升ざる一杯の麦を干す。あまり厚くすると乾きが悪いので、適量を心掛けた。また、途中で干し物返しを使って麦を返し、全体が乾くようにした。庭には、七〇枚弱のムシロを広げることができた。その後、ノゲが落ちていないと、ノゲ落しのためにツノオシをする。これは、臼やザルの中に麦を入れて、これを木の杵で押すという作業である。これを終えると、唐箕に掛けて俵装する。全ての麦の作業は六月一〇日頃には終了する。