さつまいもの品種としては、紅東や金時のほか、以前は沖縄、さやま、たいはくという品種があった。紅東や金時は味がよいとされるが収量が少なかった。一方、沖縄という品種は戦後栽培されていた品種で、大きく中身が白いさつまいもで、収穫量は多かったが、味はよくなかったという。さやまについても中身の白いさつまいもであり、多収の品種であった。
さつまいもを多く栽培する農家では苗床を作ってさつま苗を作った。苗床を作るために、一月ごろにはヤマカキといって雑木林の落葉を集める作業があった。苗床には、このヤマカキで集めた落葉や屑藁、ダゴイなどを積み、その上にコヌカを敷きさつまいもを伏せる。二月の初午の頃から作業が始まった。
さつまいもを伏せる作業をフセコミという。伏せたさつまいもの上には籾殻で表面を覆い、さらに藁で蓋をしたものである。熱の加減が難しく、おおむね人肌加減という。芽が出てくると藁の蓋は取り除き、五月に入ると一週間に一度の割合で苗を切ることができる。二〇センチの長さで切った。百間・中のある家では、百本の苗で一把とした。一方、さつまいもの栽培の少ない家では、爪田ケ谷(白岡町)や辰新田の苗屋から買った。
さつまいもの苗は、サツマサシといって大麦の間に五月半ばごろに挿す。百間・中のある家では、一反に千本ほどの苗を挿したという。途中、蔓を返す作業を三回くらい、蔓返し、蔓寄せ、蔓立ての順番に行われる。蔓返しは伸びた蔓を反対側に返す作業、蔓寄せは根元に蔓を寄せる作業、蔓立ては持ち上げて根を切る作業である。こうした作業を行わないと、さつまいもは蔓が地面に接したところに根付いて、小さなさつまいもを作ってしまう。こうしたところに余計な養分が行かないように、蔓を返す作業を行うのである。東粂原のある家では、さつまいもの栽培は、自家用程度で、耕作する畑の二割程度作ったものである。
さつまいもの収穫をサツマホリといい、一〇月下旬に行われる。三本鍬とか三本マンノウといわれる鍬で掘って収穫する。掘った穴には、あらかじめさつまいもの蔓を埋めたものである。