図1 蚕室となる部屋(西粂原 Y家)
ザシキには図2のように二台の蚕棚を組み、その上に蚕座を差して飼育した。蚕座は、成長に合わせて逐次広げられるので、四齢期にはザシキの棚だけでは足りず、隣のデイまで棚を組むこともあった。棚の幅は二間で、一段には蚕座が四枚差せる。段数は一一段と九段があり、天井の高いところには一一段、低いところには九段の棚を組んだ。組み方は、図3のとおりである。また、棚は上蔟時にも使用されるので、バラックに出したあとも解体せず、そのままにしておいた。
図2 蚕棚の位置
図3 蚕棚の組み方(西粂原 Y家)
ザシキは、春蚕が始まる前に畳を上げて板の間にし、畳を戻すのは一年の蚕期が終了してからであった。畳を上げたり戻したりするのは、四月と一一月の「衛生の日」に行われた。この両日には、地区の衛生委員や保健所の職員が家々を巡回して衛生検査を行ったので、畳を上げて床下まできれいに掃除をした。その際にザシキの畳を戻さず、板の間にしておいたのである。そして、一一月の「衛生の日」には蚕期が終了しているので、このときに畳を戻した。