桐は軽くて木目が美しく、燃えにくく、湿度の多いときは水分を吸い、乾燥時は水分を出す性質がある。桐箪笥に用いる桐は会津など福島以北の寒い土地で育ったものが堅くて木目が細かくてよい。昭和初期までは宮代でも女児が誕生すると桐を植えて婚礼の桐箪笥として加工したが、気候が暖かく桐がよく育つため、木目が粗く桐箪笥には適さない。その場合はマイタ(前板)に木目が美しい会津産の桐のマサイタを張った。昭和初期、春日部市内牧には桐畑があったという。桐畑は昭和三〇年代初期まで町内にもあった。
桐は会津桐のように遠隔地で産するものは春日部の桐材屋が丸太で買い、製板したものを仕入れている。地元の桐を使っていたころは直接農家から丸太で購入し、製板したあと、板を井桁に組んで、雨水にあててアクを抜いた。また、屋敷内に水槽があり、ここで会津桐のマイタのアク抜きをすることもあった。アク抜きのあと、天日に干して、カラシテ(乾燥させて)から使用した。現在使っている桐は桐材屋から仕入れるため、すでにアク抜きしてあり、すぐ使えるが桐の皮が付いたままなので、木取りする必要がある。
板の厚みは箪笥の部分によって異なる。また、注文によってもさまざまで、厚い板を多く使うほど高価になる。おおよその目安として三分はウシロ・ジイタ・ソコイタ・タナイタなど、四分はシタダイのテンイタ、また六分、七分はガワイタなどである。