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組み立て

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 ①「カンナをかける」 機械(超仕上げ)に通し、板全体にカンナをかける。部分的に逆目が立つので手で触れて確認しながら、カンナをかけて滑らかにしていく。桐箪笥屋が使うカンナにはナガダイといって台の部分が長い。これは板などの長く広い面を削るのに適している。大工職人が用いるような短い台のカンナを使うと、板が必要以上に削れてしまう。ナガダイを使うときはウラガネを叩いて、髪の毛一本くらい刃を出すように調節すると逆目が立たない。

2-44 カンナをかける

 ②「ホゾを切る」 板を組むためにホゾを切る。例えばテンイタとガワイタを組む場合、ケヒキでテンイタの厚みを計り、それをガワイタにしるし付けをする。ケヒキは板の厚みを測り、それをしるしとしてつけられるように刃がついている道具である。そしてガワイタに切り込みを入れ、機械(ジグソー)で切る。昔はマワシビキという道具を使った。ホゾは取る方を小さめに、残る方を大きめにするのがコツで、これを組み合わせたあと、少し湿らせるとピシッと締まる。

2-45 ホゾを切るためケヒキで印をつける

 ホゾの形は箪笥の部分によっても異なる。外から見えるところはホゾ(直角のホゾ)だが、引出などにアリホゾといって鋭角にホゾを切る方法が洋家具の影響でここ数年増えてきた。アリホゾは釘を使わなくても強度があるが、直角のホゾの場合は釘を使わないと抜けてしまう。ホゾを切ったあと、クリコガタナでザラザラしたホゾの面を滑らかにする。これをホゾザライという。
 ③「シタダイを組み立てる」 組み立ての前に内側の面はあらかじめカンナで仕上げ、外側は組み立て後に仕上げる。ガワイタに引出のタナイタのミゾツキをする。昔はミゾツキノコギリで二本のノミの間を削った。そして、ジイタとガワイタ、テンイタを組んでいく。糊をホゾに付け接着し、ホゾを軽くカナヅチで叩いた後、キリで穴を開けて釘を打つ。このときの穴は少し斜めになっている。この方が強度が増すという。また、桐箪笥に用いるキリは一回で穴が開くように、柄が長くできている。ホゾには釘を二本ずつ刺す。釘をカナヅチで叩き、余分な釘はノコギリで切る。その上から更にかまぼこ板状のウチアテをあて、その上からカナヅチでしっかり叩く。ウチアテは柔らかい桐にカナヅチで叩いた跡が残らないようにする。枠ができたら、ウシロをつける。
 次に引出を組み立てる。まず、マイタを当て、寸法を測ってから切る。このとき、引出が小さくなると取り返しがつかないので、慎重に何回も当てて正しい寸法にする。マイタの寸法が決まったら、それと合わせてサキガワを切る。オクユキはガワイタの寸法を測り、合わせる。サキガワとオクユキを組み立てて直角にしてからソコイタを打ち付ける。引出はオクユキにカンナをかけたあと、サキガワにかけ、微調整を繰り返してスムーズに入るようにする。雨の季節には桐箪笥は膨張し、乾燥した冬は縮むので、引出の調整は雨はかために、冬はゆるめにする。そのため、最も桐箪笥作りに適しているのは秋から冬にかけてである。タナイタの奥に切り込みを入れ空気穴を作り、引出の開け閉めがしやすいようにする。桐箪笥を長く使ううちにガワイタが縮んで引出が出てくることがある。そのため、あらかじめ引出の後ろにカイモンという小さな木の突起を作っておき、これで調節するようにする。

2-46 引出を作る

 ④「ウワダイの組み立て」 シタダイと同様、組み立ての前に内側の面はあらかじめカンナで仕上げ、外側は組み立て後に仕上げる。ガワイタにタナイタを入れるための溝を切る。そしてテンイタとガワイタのホゾを切り、はめる。そのとき、正面から見た隅の部分だけ板を四五度ずつ寄せたような形にする。これをトメといい、近年流行の意匠である。次にニジュウホダテをはめ、タナイタを入れ、仕切りを入れる。オボンを入れるイタザンを止める。昔は糊で貼って釘で打ち付けていたが、現在はゴムのボンドで貼る。ウシロを打ち付ける。
 次にオボンを組み立てる。オボンは四隅が曲面で高度な技術を要する。まず、よくカンナがかかるようにコグチを濡らし、カンナをかけて面を取る。オボンのサキガワはマエより高くする。これは着物が箪笥の奥に落ちないようにするためである。

2-47 ウワダイの組み立て

 扉を付ける。扉は昭和二〇年ころはソトチョウといって外にチョウバン(蝶番・チョウツガイ)が出ていたが、最近は間口が広い桐箪笥になり、内側にチョウバンが付いているウチチョウが主流になった。ソトチョウだと扉が九〇度開けばオボンが引き出せるが、ウチチョウだと扉が九〇度開いただけでは、箪笥の幅いっぱいに作ったオボンが扉に当たって引き出せない。そのため、ガワイタの内側のホダテを厚くしたニジュウホダテにしてオボンが出るようにした。ソトチョウは装飾的な金具が見えているが、ウチチョウの方が丈夫である。マイタを貼った扉は傷をつけないように、また左右対称となるように細心の注意を払って取り付け、隙間ができていないか、懐中電灯で照らして調べる。
 ウワダイ、シタダイができたあとは面取りをする。面取りは外側の角を切って内側に貼り、メントリガンナを使って削る。面取りやアリホゾ、トメといった新しい技術は洋家具の影響で入ってきたが、この技術を習得する勉強会が開かれたりはせず、それぞれの職人が独自に技術を生み出していった。