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仕上げ

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 仕上げは春日部の仕上げ専門業者が行う。仕上げには引出の調子を直す、全体にカンナを掛けるキジナオシといった作業のほかに、桐箪笥の生地に穴を開けて左右対称にザガネを付けるといった、生地屋とは異なる技術を要する。しかし削り替えのときはすでにザガネを止める穴は開いているので、生地屋も仕上げができるのである。
 まず、トノコシアゲといって、トノコとヤシャエキを混ぜて作った液で色つけをする。ヤシャエキはヤシャブシの実を煮出したもので、これを水で溶いたトノコと混ぜて液を作る。一回目の塗りではトノコを水で溶いたもの、二回目と三回目はそのときの湿度や気温などによってトノコとヤシャエキの配合を微妙に変えて液を作る。マイタにはヤシャエキの配合の多い液を塗る。このようにトノコシアゲをすることで、桐箪笥は畳に近い色になり、和室に調和するようになる。また、のちに桐の色が変化してもはぎ目が分からないように、均一に色付けするために塗る。
 次に桐の木目を浮き出させるためにウズクリで磨く。ウズクリはカルカヤの根を束ねて麻糸で巻いたものでカルカヤタワシともいう。目の粗いものと細かいものがあり、まず粗い方で目を立たせ、次に細かい方で磨く。ウズクリは削れてどんどん短くなるため、麻糸を解きながら使う。次に、蝋で丁寧に磨いていく。蝋は白と黒があり、黒の方が硬質で夏に用いる。塗るときは箪笥は動かさないように体の向きを替えながら、何回も塗り重ねる。さらに桐は水分がつくとシミになって残りやすいため、防水剤のラッカーを全体に塗る。

2-48 蝋で磨く

 こうした仕上げは晴れた日に行う方がよい。特にトノコを塗ったあとはシミになるため雨は厳禁である。