掘り井戸は、粘土層の上の滞水層から水を汲み上げる深さ二間くらいの井戸で(図11)、ノガタと呼ばれる台地の畑作地域ではこれを飲み井戸としていた。ノガタは、アカと称する粘土質の土壌で、これは硬くて崩れにくく、掘り井戸は素掘りに井戸枠をはめるだけで良い。したがって素人でも掘ることができた。浅いので、竿に桶を括り付けて下ろせば容易に水を汲むことができるが、日照り続きの夏には渇水することもあり、中や東では渇水の酷い年に雨乞いが行われたという。水質は一般に良かったが、中には鉄分の混じった赤水が出るところもあった。
図11 掘り井戸の構造