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井戸突きと泥削り

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 ユミから下げた棒に鉄製の突き棒を連結し、これで地面を突いていく。突き棒は長さが二間から三間あり、深くなると順次モウソウダケを継ぎ足した(図12)。

図12 突き棒で突く

 ある程度突いたらモウソウダケをユミから外してハグルマに結わえ付け、ハグルマを回してモウソウダケを巻き取りながら突き棒を引き上げる。そして、突き棒を外して削りの鉄管に取り替え、これを突いた穴に下ろして泥を削り取る。鉄管は先端がラッパ状に広がっており、その内側には開閉式のヘラ(弁)が付いている。ヘラは鉄管を下ろすと上がり、その際に泥が吸い込まれる。泥がたまって重くなったら、モウソウダケをハグルマに巻き取って鉄管を引き上げ、カギッチョでヘラを開いて泥を排出する(図13)。引き上げる際には、ヘラが下がって鉄管の口をふさいだ。

図13 泥を削って排出する

 突きと削りを交互に繰り返しながら三〇間(約五四メートル)ほど掘り進むと、ザクザクとした手応えの砂礫層に突き当たる。砂礫層は被圧地下水の滞水層であり、飲み井戸の場合はここから砂を採取して水質を確かめる。白くて光沢のある砂なら、水質の良い証拠である。しかし、アカッツナと称する赤みのある砂が出ると、これは水質の悪い証拠であり、白い砂が出るまでさらに掘り進まなければならなかった。深いところでは、四五間くらい掘ったという。また、それでもだめな場合は別のところを掘り直し、良い水に当たるまで三、四か所掘り直すことも珍しくなかった。
 陸田用の井戸は、水量が多ければ水質は問わない。したがって、三〇間くらい掘れば十分であった。