折箱屋は、木具(きぐ)屋あるいは箱屋と呼ばれる。木具屋とは、木を用いて道具を製作する職人であり、折箱屋は木具屋から発生した指物師(さしものし)の流れを汲む。
折箱屋には、マツの厚経木(あつきょうぎ)で笹折(ささおり)を製作する笹折屋と、スギの四分板(しぶいた)で杉折(すぎおり)を製作する杉折屋があり、本来は笹折屋を指して折箱屋と呼んでいた。杉折屋は、スギの赤身を用いることから別名アカヤとも呼ばれ、これには高度な指物の技術が必要とされた。そのため、笹折屋とは職種を異にしていたのである。
百間で昭和五年から折箱屋を営む知久勇家は、笹折と杉折の両方を手掛ける数少ない職人である。知久家では、勇氏の父である初代春吉氏(明治三九年生)が大宮市(現さいたま市)の「岩井折店」で一二年間の修業を積み、そこで指物の技術を習得して杉折箱の製作も行うようになった。二代目勇氏も春吉氏の技術を習得し、多種の杉折箱を製作している。
以下、知久家での調査をもとに、折箱屋の仕事や製品について紹介する。