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厚経木の加工

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 笹折の厚経木とするマツは、北海道産のエゾマツと本州産のジマツがあり、質が良いのはエゾマツである。ジマツは木目が粗く、節が多く、ヤニも多い。したがって、笹折ののせ蓋用とされ、ほかにはエゾマツが用いられる。
 マツは山師から購入され、これを製材所で厚経木に加工する。加工の仕方は、マツの種類によって異なる。
 エゾマツは、四つ割りにしてから幅と長さを整え、鉋で厚さ四厘(約一・二ミリ)の柾目に削る。厚経木の規格は、幅が二寸から一尺、長さが一尺二寸から二尺五寸で、厚さは一〇〇枚が四寸となる。削るには経験と勘が必要とされる。鉋の刃の研ぎ方、出し方、そして、材の当て方が完璧でないと微妙な誤差が生じ、厚経木が片薄になってしまうのである。削った厚経木は一〇枚くらいずつ重ねて吊し、乾燥させる。北海道の製材所では、乾燥中に発散される湿気で厚経木が凍らないよう、木端や石油を燃やして暖房を行なった。こうして乾燥させた厚経木が、折箱屋に納められる。折箱屋では、厚経木を二枚張り合わせて用いる。厚経木には表と裏があり、裏は逆目(さかめ)と称してささくれが立っている。そこで、鉋で削って滑らかにしてから裏同士を澱粉糊で貼り合わせる(2-56)。

2-56 厚経木の逆目を鉋で削る

 ジマツは鉋で削ることをせず、ムキ(剥き)と称して材を機械に通して板目に剥く。厚さは一〇〇枚が二寸五分で、一枚は二分五厘となり、これを張り合わせず一枚でのせ蓋に用いる。大きい笹折は一〇〇枚を三寸とし、やや厚めにする。