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仕事場と工場

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 知久家の家屋は、現在鉄筋コンクリートの三階建てであるが、それ以前は道路に面して仕事場と店舗を構え、その裏が二階建ての母屋になっていた。また、母屋の裏には工場(こうば)があり、ここでスギ板の加工を行った。
 仕事場は板の間で、ここでは厚経木の加工、笹折や杉折の組み立て、梱包が行われる(図21・2-65)。照明は、自然光が基本である。折箱屋は、自然光によってできる影で材の凹凸や反り具合を見極めるので、天候に関わらず自然光が頼りとなる。そのため、仕事場は南西向きに構えられ、鉄筋コンクリート造りとなった現在もその方角は守られている。

図21 仕事場の平面図


2-65 仕事場

 仕事場の脇の店舗では、プラスチックのパック、紙箱などの食品容器や掛け紙、紐などを販売する(2-66)。店舗を作ったのはプラスチック製品の需用が高まった近年のことであり、以前は店舗までがすべて仕事場となっていた。

2-66 店舗

 スギ板の加工を行う工場には、姫宮神社の弊束(へいそく)がまつられている。毎年、暮れの大掃除がすむと機械にオソナエ(お供え餅)をあげ、幣束をまつって来る年の安全を祈願する。