木製の器の歴史は古く、縄文時代にはすでに存在していた。これは材木をくりぬいて作った刳物(くりもの)で、桶のように底を別に作る容器としては奈良時代には「曲げ物」が作られていた。曲げ物とは桧や杉のへぎを円筒形に巻き、その合わせ目を樺皮(桜の皮)で縫って底を付けたものである。室町時代になると酒造業が盛んになり、醸造するための大きな木の容器が必要になったが、従来の曲げ物では容量の大きなものを入れるには限界があり、短冊形の板を並べてタガをしめた桶が作られるようになり広く普及した。江戸時代になるとタライや風呂桶など、生活全般に広く用いられるようになった。町内でも各地区に一軒は桶屋という屋号の家があるように、暮らしに欠かせぬ存在であった。しかし、昭和三〇年代以降プラスチックなどの普及によって桶の需要は減少し、桶屋も少なくなった。