四隅が丸みを帯びている風呂桶(カクブロ)を一日で作った。フロオケはマエとヒラゴとウシロからなる。マエとウシロは曲線、ヒラゴは直線で、マエはガワが七枚、ウシロは九枚、ヒラゴは左右二枚、合計二〇枚のガワでできている。ソコイタは五枚である。作った風呂桶は自転車の荷掛けに積んで、砂利道であった御成道を通って与野まで運んだこともある。修業しているころ、風呂桶と蓋まで作って普通の職人なら一日半かかるところを一日で作り上げ、五〇銭のブチをもらったことがある。このころの大工職人の一日の手間は九〇銭から一円だった。