桶はサワラ材が適していて、特に木曽産のものが木目が細かく、使い勝手もよく喜ばれた。サワラは柾目だと吸水性がよく、ご飯を入れてもスエナイ(腐らない)。ただし長期保存の醤油桶、モロミ桶などは塩気が染み出さないように板目で作った。もしも柾目で作ると年輪に沿ってしみ出してしまう。桶の材料を専門とする店はこの辺にはなかったので、建築用の材木屋で丸太で購入した。桶作りには板を買うと損である。丸太ならその丸みを利用して割ればよいが、板だと必要な分より随分と厚い板を使わないといけないからである。例えば五分の厚みをとるためには七分の板が必要だった。桶作りで板を用いるのはフタやソコイタであった。
図23 板目と柾目の違い