3-9 ミソカッパライの終わった幣束(川島 O家)
大晦日の晩の行事食というと年越しそばが多いが、中にはそばを食べないでけんちん汁でご飯を食べる家もある。
内野のある家では、大晦日には年越しそばでなく、けんちん汁でご飯を食べる。このときのお茶うけに、冬至の味噌漬のゆずを食べる。夕食が終わると年男がミソカッパライを行い、この祓いの具は屋敷の北側の門の角に挿す。なお、祓いの具はカマジメと一緒に姫宮神社からいただく。
須賀のある家では、大晦日にはけんちん汁でご飯を食べる。このご飯はよく乾かしたナスの枝を燃やして炊く。これを「借金ナス(ナス=返す)の木」という。この言葉にはかつては、大晦日に一年間の決済をしたので、その年の借金を全部返すということが込められている。養蚕が盛んなときは蚕を売ったお金や、縄ない仕事が大きな現金収入であり、これらのお金が入ったときに支払いを済ませたものである。大晦日にそばを食べたことも以前あったが、このときによくないことが起ったのでそばを食べるのを止めたという。大晦日の食事が終わるとミソカッパライを行う。ミソカッパライの具もカマジメと一緒に神主さんからいただいてくる。ミソカッパライが終わると祓いの具は、ケイドウの門のところに挿す。また、このときに魔除けにトマブリ(戸守り)を玄関や勝手などに三枚貼る。
山崎のある家では、大晦日には年越しそばを食べて、家族全員が風呂に入り終わってからミソカッパライを行う。ミソカッパライは年男が「祓いたまえ、清めたまえ」と唱えながら、最初に神棚を祓ってから、家族の者を祓い、次にすべての部屋・台所・トイレ・物置・井戸などを祓い清める。祓い終わると、屋敷の外の畑の隅に挿す。また、この日には年越しそばを神棚に上げ、その上げたそばを糊として戸守りを玄関、雨戸、部屋の戸板へ、御守りを柱に貼る。
須賀下のある家では、年男が身代神社の神主からいただいてきた祓いの具でミソカッパライを行い、一年の厄を祓う。ミソカッパライは大神宮様から便所神様まで家の神様を全部祓う。その後、家族の者の頭を祓い一年の厄を祓う。ミソカッパライが終わると祓いの具は屋敷の角に挿しておく。大晦日には自家製のそばを打って、親戚などに配った。
本田のある家では、神主からいただいてきた祓いの具でミソカッパライをして一年の厄を祓う。ミソカッパライが終わると祓い具は屋敷の角に挿しておく。大晦日には年越しのご飯を神棚に供えた。